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忘れられない、あの酸っぱさとうま味。食物繊維・カルシウム豊富な健康菓子「都こんぶ」のこだわり


忘れられない、あの酸っぱさとうま味。食物繊維・カルシウム豊富な健康菓子「都こんぶ」のこだわり


赤いレトロなパッケージが懐かしい、「都こんぶ」。その独特のうま味と酸味は、昭和初期の発売以来、時代を超えて多くの人から愛されてきました。また食物繊維やカルシウムを多く含む「都こんぶ」は、昨今の健康志向の観点からも再注目されています。
今回は創業90年を超える老舗メーカーの中野物産株式会社に、日本を代表するロングセラー菓子の歴史やおいしさの秘密について伺いました。


 

誕生は1930年代
丁稚奉公でのアイデアが形に

「都こんぶ」は、昭和生まれの昆布菓子です。皆さんも駅の売店やコンビニで、一度は手に取ったことがあるのではないでしょうか。

生みの親である中野正一さんは1912年、京都で生誕しました。当時の尋常小学校を出たあと、大阪府堺市の昆布問屋へ丁稚奉公をしていたそうです。その頃の堺市は、北海道産の昆布が北前船によって運ばれてきた歴史があり、周辺は昆布加工業で栄えていました。

創業者の中野正一さん

▲中野物産の創業者 中野正一さん

日々の厳しい生活のなかで、倉庫にある売り物にならない昆布の切れ端をおやつ代わりとして食べていた中野さんは、空腹の子ども心に、ふと「昆布に味付けをしたら、お菓子として売れるのではないか?」と思いつきます。

優れた商才のあった中野さんは、1931年に19歳で晴れて独立し、堺に「中野商店」を創業しました。そこで幼い頃からから温めていたアイデアを実現し、昆布を原料としたお菓子を開発。
黒蜜の入った酢漬けの昆布菓子に望郷の想いを込めて「都こんぶ」と名づけました。こうして、現在まで続く「都こんぶ」の原型に当たる昆布菓子が誕生しました。

当時から佃煮をはじめとする昆布製品はたくさんありましたが、これをお菓子にするという発想はとても珍しいものでした。

中野商店は駄菓子の販路に注目し、菓子問屋の立ち並ぶ天王寺や松屋町のほか、子どもの娯楽の中心であった人気の紙芝居屋への売り込みを実施。「都こんぶ」の名前は少しずつ全国に知られていきました。

しかしそれに満足することなく、大人にも充分受け入れられる菓子であることを確信した中野さんは映画館や演芸場に販路を広げたのち、鉄道に目を付けます。サラリーマンのポケットや女性のハンドバッグにも入り、手のひらにおさまる小型サイズを基本とした「都こんぶ」は、赤い色に桜の花びら、そして「都」の文字も店頭で目を引き、人気を高めていきます。

車両も販促ツールに

▲業務用車両でも社名や商品名をPRしました

知名度をいっそう押し上げるために、1965年頃にはテレビCMやラジオ放送を積極的に行い、当時お茶の間で人気だった落語家の林家三平さんの起用により「都こんぶ」は全国区のブランドになりました。

その後も、大阪地下鉄御堂筋線の各駅の改札口への広告を展開するなど、「都こんぶ」はPRを推進。大阪万国博覧会という当時最大級のイベントの影響も相まって、その宣伝効果は絶大でした。
水産庁長賞(1965年)、第17回全国菓子大博覧会大臣賞(1968年)など名だたる賞も獲得。不動の人気を保ちながら、今に至ります。

ネオンサイン

▲大阪のなんば駅前にあったネオンサイン

ちなみに発売当時の「都こんぶ」には、現在のような白い粉(いわゆる「魔法の粉」)がまぶされていませんでした。
あのスタイルが誕生したのは1977年頃のこと。当時使用していた甘味料が国の方針で突然使えなくなり、その代わりとなる味付け方法を考えた結果、開発されたのが「魔法の粉」なのだそうです。

「魔法の粉」の主成分はアミノ酸。おいしいだけでなく、身体にもやさしいのがうれしいですね。

 

酸味とまぶし粉のバランス
伝統の製法が支える味の原点

中野物産は、大阪府貝塚市の「二色の浜工場」、泉南市の「泉南りんくう工場」の2つの工場で商品を製造しています。

「都こんぶ」といえば、やはりあの独特のうま味と酸味。この特徴を引き出すために、「都こんぶ」は北海道・道南地方や三陸地方の真昆布を原料に、およそ11の工程を経てつくられています。

まず、乾燥した昆布を酢に漬けてやわらかくする「荒漬け」を経て、専用包丁を使ってバラバラな形の昆布を「荒切り」し、大きさを手作業で揃えていきます。その後、企業秘密の調味料で味付けされた液に昆布を「上漬け」し、昆布を一枚ずつはがしながら、同時に表面の付着物を取り除いていきます。

荒切り

▲一枚一枚すべて手作業で行われる荒切り

上漬け

▲「都こんぶ」独特の味わいをしみ込ませる上漬け

さばき

▲昆布を一枚ずつはがしながら、小さなエビや貝などの付着物を取り除きます

続いて「魔法の粉」を昆布にまぶして昆布をプレス、その後裁断し、計量・包装すれば、できあがり。

粉まぶし

▲回転する機械で「魔法の粉」をまぶします。しっかりと均一にまぶすために、1回目の粉まぶし→一晩熟成→2回目の粉まぶしという工程を踏むそうです

計量

▲一口サイズにカットして、1パッケージ分の量に分けていきます

包装

▲おなじみの赤い箱に入れて、外側をフィルム包装すれば完成です

全工程には5日間かかるとのことで、こうした伝統に裏打ちされた手作業による製法と、最新の衛生・包装・管理設備の両立により、一度食べたら忘れられない味の原点を守り続けているそうです。

「お客様から愛されている、酸味やまぶし粉のバランスを大切にしています」。

中野物産株式会社の担当者は、製造のこだわりについてそう語ります。

「国内産の真昆布とひとくくりにしても実際にはいろいろな種類があり、昆布の部分によっても歯ごたえが違うのですが、なかには原料由来の食感の違いを感じ取ってくださるヘビーな愛好者の方もいらっしゃって、本当にうれしい限りです」。

もちろん海の幸なので、獲れた昆布それぞれに個体差があります。漬け込み時間をその日ごとに変えるなど、いつ食べても同じ食感や味になるように、熟練した人の目や舌で微調整を行っています。

 

栄養たっぷりでヘルシー
さまざまな商品展開も

食物繊維やカルシウムが豊富に含まれ、アミノ酸の粉がまぶされた「都こんぶ」は、栄養満点のおやつです。低カロリーであることに加え、昆布が水分を含んで膨らむため満腹感も得やすく、小腹が空いたときやダイエット時の間食にも最適です。

パッケージ

▲伝統の赤いパッケージは、「お客様の目に留まりやすいように」という狙いから。箱に「小窓」が開いているのは、中身がきちんと入っているかをチェックするために人の目で見ていた時代のなごり。現在は機械で検査しているそうです

フィルム包装

▲箱を開けると丁寧にフィルム包装されています

昆布盛り付け

▲箱はコンパクトですが、中身はぎっしり詰まっています

昆布アップ

▲いつまでも変わらぬ味に安心します

昨今の健康志向の観点でも有能な「都こんぶ」を存分に楽しみたい方に向けて、お得な1kg入のパックも販売されています。この商品は、なんとコンビニやスーパーで見かける小箱(15g入)のおよそ67箱分(!)。おやつや家飲みのおつまみのほか、料理の隠し味やトッピングなどに使うのもおすすめです。

また、中野物産では「都こんぶ」以外にも、「おしゃぶり昆布 浜風」「おしゃぶり昆布 梅」といった多彩な昆布製品を手がけているほか、2022年3月発売の「こんにゃくせんべい」といった斬新な商品もリリースしています。

「こんにゃくせんべい」はSNSなどで、低カロリーのおつまみとして人気を集めているそうです。

K徳用こんぶ&こんにゃくせんべい

▲写真左:「K徳用こんぶ 1kg入」、写真右:「こんにゃくせんべい」都こんぶ味とおしゃぶり昆布梅味の2種

「昆布のように身体に良い原材料を、と探るなかでこんにゃくに辿り着きました。1袋で板こんにゃく約1丁分が凝縮されており、製造過程において特殊技術で油分を飛ばしていますので、サクサクとした食感で、しつこさがありません。「都こんぶ」味と「おしゃぶり昆布梅」味があり、昆布パウダーや昆布エキスが入っています。食物繊維やカルシウムが豊富に含まれる健康的なスナックです。お腹のなかでせんべいが水分を吸収し、少量でも満腹感を得られるのも特徴です」。

「都こんぶ」のブランドは多くの人に認知されているがゆえに、その名を冠した商品を開発する際にはとても苦労するとのこと。特に“酸味”に関しては、「都こんぶ」のイメージに近い味を追求することで、ファンの期待に応えているそうです。

 

世代を超えて愛される製品
環境に配慮しながらつくり続けたい

子どもの頃の思い出が懐かしくそっと手に取るお年寄り、いつもの通勤ルートでひと箱買うのが習慣のサラリーマン、そして初めて口にしてすっかり虜になる新たな世代の子どもたち……。

長い間、時代をまたぎ、年齢や性別を超えて人々を魅了する「都こんぶ」を、妥協しない製品づくりで守り続けてきた中野物産株式会社は、2031年に100周年を迎えます。

担当者は今後への意気込みをこう語ります。

「今後も長く愛される製品づくりに向けて、子どもから高齢の方まで、さまざまな年齢層によろこんでいただけるよう尽力したいと思います。また昨今はSDGsなど、自然環境の配慮や脱炭素への取り組みも事業者として必須となっています。工場における太陽光発電の導入など、会社として積極的に責任を果たしていくべく準備を進めています。そのうえで、ブランドの活性化にいっそう力を入れ、お菓子のみならず各食品とのコラボレーションや、外部との協力のもと、ブランドをしっかりアピールして昆布商品を世に送り続けていきたいと思います」。

都こんぶイメージ

▲すでに絶大な知名度があるにもかかわらず、その立場にあぐらをかかない姿勢を感じました。これからの「都こんぶ」の展開にも注目です

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