香川県のブランド豚「オリーブ豚」を使った、絶品チャーシュー。今回は楽天市場でランキング1位を獲得し、デパートのカタログ販売でも人気の「焼き豚P」をご紹介します。
ブランド立ち上げから現在までのストーリーや、製品づくりへのこだわり、そして地元・香川県への想いについて、「焼き豚P」を運営する有限会社パイプライン 代表取締役の安藤健介さんにお話を伺いました。
全国トップセールスから
建築会社、そして焼き豚屋へ
パイプラインはもともと焼き豚屋さんだったわけではなく、公共事業の水道工事などを請け負う会社としてスタートしました。
公共事業の他に電化住宅のリフォームなども手がけていましたが、地域との結びつきが強い建築業界。商圏となるのは会社のある香川県綾歌郡綾川町の中でも、地元の小学校の学区内まで。安藤さんは、このままではいずれビジネスとして限界が来ると感じていたそうです。
▲有限会社パイプライン 代表取締役 安藤健介さん
そんな同社が焼き豚の事業を立ち上げたのは、2007年。日本の大手精密機器メーカーで全国トップセールスだった安藤さんが、地元の香川県に戻ってから7年後のことでした。「モノを売るのは得意なので、せっかくなら自分で作ったモノを売ろう」と考えたのがきっかけです。
では何を売ろうか、と考えた時に思い浮かんだのが、幼い頃によく食べていた隣町のお肉屋さんのチャーシューでした。
ルーツは隣町のお肉屋さん
おじいちゃんのレシピを継承
“隣町のお肉屋さん”は、大正時代から営業しているような昔ながらの精肉店で、チャーシューはお店のレギュラー商品ではありませんでした。保存技術がそこまで発達していなかった時代、売れ残ってしまった精肉を少しでも捨てずに長く保存するために考案されたのが、このチャーシューでした。
余剰在庫が出た時だけお店に並ぶ、いわば裏メニュー。これを安藤さんは、誕生日や運動会、受験などのハレの日に、いつもお母さんにリクエストして買ってきてもらったそうです。
ちょうど安藤さんが新しいビジネスの立ち上げを考えていた頃、そのお肉屋さんは高齢になり、引退を考えていました。そこで安藤さんは将来の師匠になる“肉屋のおじいちゃん”に頼み込みました。「僕はマスターのチャーシューが食べられなくなるのが辛い。だから、僕より長生きするか、僕に作り方を教えるか、どっちがいい?」と。
そうして肉のカットからこだわった、精肉店仕込みの本格的なチャーシューの作り方を体得。その秘伝のレシピを、脂の甘みとコクが特徴のブランド豚「オリーブ豚」、小豆島産の醤油、香川県産の和三盆糖やにんにくなど、高品質な地元の県産品でさらにアップグレードしたのが「焼き豚P」ブランドの商品です。
▲受け継がれたレシピと県産素材で作り上げた「焼き豚P」こだわりのチャーシュー
あえて香川県産の原料を使うのは、地元産業を盛り上げるという狙いもありました。宮崎県で東国原英夫さんが県知事に就任し、県産品をPRすることでマンゴーや地鶏が飛ぶように売れたのがヒントになったそうです。
ロジカル思考と行動力で
全国区になった「焼き豚P」
「焼き豚P」の販売をスタートさせた頃、安藤さんは事業活動と並行して、社会人学生として大学院に通い始めます。
大学院ではマーケティングや財務・会計に関する知識を学びました。卒論のテーマは、焼き豚のビジネスモデルに関するものでした。他の学生が書籍などをもとに卒論を組み立てるなか、安藤さんだけは自らの実体験がベースです。教授に論文の進捗を報告する時は、自分だけまるで会社の週報のような感覚だったそうです。
徹底したロジカルな思考と、経営に直結するファイナンスの知識を叩き込まれた安藤さん。そこから「焼き豚P」の躍進が加速します。
▲左上:「焼き豚P」を製造するパイプライン従業員の皆さん、左下:チャーシューを製造する安藤さん、右:製造工場の外観
「焼き豚P」の商品には自信がありましたが、ただおいしいだけでは売れないことも分かっていました。そこで安藤さんは、さまざまなアクションを起こします。
全国のB級グルメが集うコンテストに出品したり、早くから通信販売の可能性に目をつけ、楽天市場に出店。サイト内のランキングで1位に輝くまでに成長しました。新聞などのメディアで取り上げられたことも追い風になりました。楽天が主催するテニス大会「楽天ジャパンオープン」にも楽天代表としてフードコーナーに出展し、楽天グループ会長の三木谷浩史さんをはじめ、来賓客の舌をうならせたこともありました。
楽天ナンバーワンの実績を引っさげ、大手食品卸会社との取引もスタートし、全国展開のスーパーや百貨店などのカタログ販売に参入。「焼き豚P」は日本中のグルメ好きの舌をうならせ、その人気を不動のものとしました。
▲自慢のチャーシューはオンラインショップやカタログ販売など、さまざまな売り場で好評を博しています
化学調味料・保存料不使用
香川県産の素材を厳選
多くの人たちに愛される「焼き豚P」のチャーシュー。ここからは、そのこだわりについてご紹介します。
まずは主な原料から。
香川県生まれのハイクオリティな素材を厳選しています。
【オリーブ豚】
オリーブを絞ったあとの果実を混ぜた飼料を食べて育った「オリーブ豚」。肉質はとてもやわらかくジューシーで、甘味成分は一般的な豚肉と比べて1.5倍にもなります。白身はフルーティーな旨みと甘みがありつつもさっぱりしていて、赤身には強いコクが感じられます。ちなみにオリーブは香川県の県木でもあり、全国のオリーブ収穫量の99%を香川県が占めているそうです。
▲オリーブ豚を飼育している農場
▲オリーブの果実を食べて育つオリーブ豚
【醤油】
小豆島有数の醤油ブランドであるマルキンの濃口醤油を使用。豊かな瀬戸内の自然に育まれてできた濃口醤油は、まろやかでコクのある味わいと芳醇な香りが漂うことが特徴です。
▲歴史を感じさせる醤油工場の外観
▲醤油製造の様子
▲醤油製造の様子
【和三盆糖】
原料には香川県産のサトウキビを使用。粉砂糖に近いきめ細やかさを持ち、深みのある上品な甘さと後味が良いことが特徴。風味豊かな甘みが生まれ、チャーシューの味を引き立てます。和三盆は伝統的な製法で作られている砂糖の一種で、和菓子の高級材料として使用されています。製糖の作業が複雑なうえ、寒冷時にしか作ることができません。
▲和三盆糖の原料となるサトウキビ畑
【ニンニク】
香川県産のニンニクは、肉厚で臭み、苦味がないことが特徴。隠し味として、素材の旨みを引き立たせる役割を担っており、香り、味わいの良いタレに仕上がります。香川県内の契約農家で生産し、栽培期間中農薬を使用せずに栽培しています。
▲ニンニクを栽培している畑
製法におけるこだわりは、秘伝のレシピを守りながら、食材の味を大切に引き出すこと。一つひとつ手作業で丁寧に作られています。加えて、素材の味を活かすため、化学調味料・保存料は一切使用していません。
▲大きな豚肉の塊から熟練の技術でカット。脂身は丁寧に落とします
▲カットされた豚肉をネットに詰めます
▲鍋に入れて炊いていきます
▲炊き上がったチャーシューはバットに移されます
▲完成したチャーシューは一つひとつ丁寧にパッケージングされます
チャーシューの製造工程は、動画でもご紹介しています。
「焼き豚P」のチャーシューは、安全性への配慮も万全です。
製造工場では細かいレシピや作業マニュアルを作り、しっかりした工程管理のもと、安定した品質のチャーシューを作れる体制を構築。成分については精細なデータを取り、高い安全性を確保。
最初から品質基準の厳しい百貨店で販売することを想定していたので、管理体制も整っています。万が一、不良品があった場合でもすぐに出荷先を判別できるトレーサビリティも備えています。
現在「焼き豚P」では、チャーシューの他にもオリーブ豚を使ったハンバーグなど、数々の“香川発グルメ”を作っています。また、チャーシューの製造過程で出る端材を使ったカレーや、お得な「端っこチャーシュー」といった、食品を無駄にしないためのアイデア商品も手がけています。
チャーシューの製造工程ではどうしてもロスが出てしまいますが、そのロスもまとまった量が集まれば原材料になる。そのためにも「焼き豚P」は販売数を伸ばすことに注力しています。
端材を活用した「焼豚屋のカレー」のストーリーは、こちらの記事でも紹介しています。
▲オリーブ豚ハンバーグ
▲焼豚屋のカレー
冷めてもおいしい
白身が甘いチャーシュー
そんな香川県産の食材を贅沢に使用した「焼き豚P」のチャーシューを、実際に食べてみましょう。
▲こちらはオリーブ豚のバラ肉のチャーシュー(255g)。冷凍の焼き豚と2種類のタレが付属しています
▲解凍して袋から取り出しました。オリーブ豚チャーシューはバラ肉とモモ肉があります。ガッツリ系が好きな方は、こちらのバラ肉がおすすめ
安藤さんにおすすめの食べ方を聞いたところ、意外な答えが返ってきました。それは「解凍したあとすぐ」。冷凍庫から取り出して、カットして常温になった状態、つまり冷めたままの状態です。
そのアドバイスに従って、まずは冷蔵庫解凍してそのまま食べてみると、確かに普通のチャーシューとはぜんぜん違います。香辛料やスパイスを使わず、醤油、砂糖、みりん、ニンニクだけで味付けしているので、オリーブ豚の素材の良さが際立っています。
▲確かに冷めたままでもおいしい! 白身がしつこくないので、イヤなギトギト感がありません
そんなチャーシューが温めてもおいしいのは、いうまでもありません。もっとやわらかく、ジューシーになります。コク深い醤油ベースのタレがしっかりとしみ込んでいながら、和三盆糖による上品さもプラス。特に白身がクリーミーで甘くて、旨みがたっぷり。まさに絶品です。
▲電子レンジで温めると、白身が溶けてもっとジューシーに
そのままでワンランク上のおかずやおつまみになりますし、いろいろなアレンジを加えるのも良いでしょう。
▲アレンジ例その1:焼き豚丼
▲アレンジ例その2:焼き豚バーガー
▲アレンジ例その3:卵かけ焼き豚うどん。讃岐うどんの本場・香川県らしいアレンジです
夢は食品だけじゃない
地域社会に貢献するために
「焼き豚P」で大きく成長したパイプラインが、これまでずっと目指してきたのは「地域に貢献すること」。商品の素材に県産品を採用していることはもちろん、食品製造以外に、ルーツである建築、エコバッグ製造など複数の事業を手がけているのもそのためです。
「小さい会社でもいいから、世の中に影響を及ぼす会社になりたい」と考える安藤さんにとって、食品製造だけで実現できることは限られています。
例えば食品をきっかけにレストランができて、そこに雑貨やファッション販売店などが加わって商業施設に。そんな感じで地元・香川県の信頼できる人たちを巻き込んで、地域社会を盛り上げていくのが、パイプラインの願いです。そのストーリーにはきっと建築のノウハウが大きな助けになるでしょう。
焼き豚をきっかけに、大きなビジョンを描く。パイプラインと安藤さんの挑戦は、これからも続きます。
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